学術支援室 笠原 浩二
研究技術開発室 西村 友枝
東京都は「科学技術週間」の間、小・中学生を対象として科学技術に親しむイベント『Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス』を日本科学未来館で開催しました。当研究所は「DNAの形を見ながら、生命の仕組みを学ぼう」と題して、以下の3つの企画を行いました。企画1「ブロッコリーからDNAを取り出そう」では、ブロッコリーをすり潰しDNAを抽出し、エタノールを加えるとDNAが白い沈殿として見えてくる実習です。小さいお子さんが白衣を着てうれしそうにしていたことや保護者様も一緒に真剣にかつ楽しんで取り組まれている姿が印象的でした。企画2「DNA鑑定で犯人を捕まえよう」では、宮岡佑一郎プロジェクトリーダーが受け持ち、「宝石泥棒の犯行現場に髪の毛が落ちていて、防犯カメラに写っているのは2人、個人差のある繰り返し配列の長さを比べて犯人を特定する」というストーリー仕立てで、実際にサンプルを電気泳動して光るDNAの長さを比較し、犯人を当ててもらいました。参加した小学生のみなさんは目を輝かせて楽しんでいました。企画3「DNAの二重らせんを作ろう」では、ビーズでDNA二重らせんのストラップを作りました。企画1や2に参加した方も多く「本日は色々回って、すっかりDNA博士です!」や「来年も参加したい。」などのお声をいただきました。ご参加いただいた約250名の皆様方が、少しでも科学に興味を持っていただけたら幸いです。
4月11日(木曜日)、「お酒にまつわる話し」と題して、2024年度第1回都医学研都民講座をハイブリッド方式で開催しました。今回は、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社 顧問 神田 智正先生を講師にお迎えしました。
まず、当研究所ゲノム動態プロジェクトの笹沼 博之プロジェクトリーダーより、アルコールを摂取した時に、人の体の中では何が起こっているのかを研究する中で、アセトアルデヒドがDNAを傷つけることを発見したというお話がありました。
続いて、神田先生よりお酒の定義やお酒の種類、お酒の作り方についてお話がありました。お酒とは糖類を発酵したアルコールを含む飲料のことで、ここでいうアルコールは、エチルアルコールだけを1%(容量、15℃)以上含有する飲料のことを指します。アルコールの仲間にはメチルアルコールがありますが、非常に毒性が強く、体内で分解されるとアセトアルデヒドよりも毒性の強いホルムアルデヒドが作られるので、毎年誤飲によって死亡事故が起きています。
お酒が強いか弱いかはALDH(アセトアルデヒド分解酵素)によって判定されます。アルコール分解がゆっくりで、アセトアルデヒド分解が早い人は、アセトアルデヒドがゆっくり作られて、作られたアセトアルデヒドがさっとなくなるので、アルコール中毒になりやすい人と言えます。
酔いとは、脳が麻痺していくことで、大脳皮質表面から麻痺が進み、徐々に脳の深い部分まで麻痺していき、小脳まで麻痺が進むとふらふらになり、日本酒2合、ビール大瓶2本を超えると自己制御が外れてきます。純アルコールで約20g/日程度が節度ある適度な飲酒とされており、ビールで中瓶1本、日本酒1合程度になります。食事と一緒に飲酒すると、空腹時に比べて血中アルコール濃度の上昇を抑え、血圧の変動も抑えることができます。
飲酒は太るのか?と聞かれますが、飲酒だけでは太るとは言えません。飲酒量が増えると、飲酒の時間が長くなり、おつまみ等の摂取量も増えます。結果として、飲酒時の総カロリー量が増えますので、このことが太る理由かもしれないとのことでした。
ビールには、樽・瓶・缶等がありますが、同じ銘柄なら中身は一緒です。樽生サーバーで注ぐと、圧力と泡の細かさがまったく違うので、注ぎ方によって味が変わると言われています。近年、ノンアルコール飲料に対する需要が増えており、酒税法では、1%未満であれば酒類とされませんが、日本のノンアルコールは0.00%が主流となっていますと、お話いただきました。
講演後のアンケートでは、「お酒の種類や製造工程などで初めて知ることもあり、興味深かったです。」「アルコール摂取は身近な話題・問題ですので聞けて良かったです。」といった御意見を多く頂きました。